2018.12.15 update

【特集】神戸のつくり手たち Vol.3<Bellago/ベラーゴ>|心に響くモノづくり──<べラーゴ>が生み出す美しい"佇まい"とは

街を愛し、モノ作りに情熱を注ぎ込む──横浜と並び、世界に開かれた港町としていち早く栄え、独自の文化を育んできた神戸。震災から立ち上がったこの街で、モノ作りに励む3組のクリエーターを訪ねた。


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継続することで生まれた強い覚悟


<Bellago/ベラーゴ>のデザイナー兼職人である牛尾 龍が、「自分の手が届く範囲でモノ作りを完結させたい」と、15年前にショップ兼工房を神戸に構えたのは必然のことだった。

「私が革製品の製作にのめり込むきっかけは、ハタチぐらいのときに姉からもらったバケツ型のショルダーバッグでした。量産品でしたが、サイズ感や太いショルダーベルト、ヌメ革など、なぜか好きだった。それから鞄作りの勉強を始めました」


母親が靴の製甲(アッパー)職人で、幼少期からミシンに触れていた牛尾にとって、モノ作りは特別なことではなく、ごく当たり前に身近にあったもの。学校卒業後は、神戸の鞄職人に師事し、基本的な技術を習得。その後、師の引退を機に自身のブランドを始めた。

「師匠からはモノ作りの技術的な部分というよりも、姿勢を学びました。これと決めたらそれに没頭することが私にできる唯一のことだったので…」

神戸の街でモノ作りをしていることは背水の陣みたいなものと語る牛尾。独立した当初は自宅を工房に、個人のオーダーを受けながら鞄を製作した。彼の"やるしかない"という覚悟は、当時から常に根底にあり、今でも自分自身が納得できるモノづくりを貪欲に追求し続けているという。


いま心地良く使えるものを届けたい


「モノ作りを学んでいるときはどうしても技術至上主義になって、どんな商品を見ても、ステッチが、コバが……とディテイルに目が行ってしまいます。そういう時期を超えると、鞄も財布もあるべき"佇まい"というのが見えてくる」

的確な素材使いや正確な縫製技術、全体のバランスが整っているのは、"良いもの"としての必須条件であるとしながら、<ベラーゴ>のキーワードといて“佇まい”という言葉を挙げた。


マルチケース「プラティコ」 19,440円
「お札とカードと小銭が分けられてコンパクトなもの」というオーダーの要望から生まれたこの形状は、内装で袋になった仕切りがある3室構造。ケース上下にファスナーが付いたユニークな仕様も<ベラーゴ>ならでは。


「一生使えるものも、もちろん良いけれど、“今”使いたいなって思うものも必要だと思うんですよね。エイジングや味出し、愛着などももちろん大切ですが、僕にとってはその瞬間が心地良い"佇まい"が一番大切。素材や技術に頼るだけではダメなんです。そういう他力本願ではなく、今心地良いモノを創りたい」

語気を強めながら言った。

社会の変化によって、私たちが持つもの、容れるものが刻々と変化していく中で、それに対応した佇まいの商品を生み出し続ける。変化には変化で対抗していく、揺るがない強いこだわりは、言葉としては出てこなかったが、<ベラーゴ>の商品一点一点を見れば、その魅力は容易に感じ取れるはずだ。


<ベラーゴ>が目指すところ


神戸・元町駅からほど近い路地を入ったところに<ベラーゴ>のショップ兼工房はある。ここでは、ほぼすべてのアイテムを牛尾とアシスタント女性のふたりで製作している。

「量産することに抵抗はないけど、クオリティが伴わなくなる」

我々は、彼に<ベラーゴ>が目指すところは? とストレートに問いた。

「自分はフォルム系」

「鞄でも財布でも、きちんと作れば作るほど、全体の雰囲気が静かになり、見え方が大人しくなってしまうのが難しいところ。私はオーダーとレディメイド(既製品)を手がけるからこそ、常にそのバランスに気を遣っています。それを気づかせてくれるから、純粋にモノ作りという意味でオーダーは面白い」


コインケース 10,800円
定番で展開するジュエリーBOX型のコインケースは、伊勢丹新宿店別注仕様でコンパクトサイズに。



キーケース「KP」17,280円
ころんとしたフォルムが愛らしいベル型キーケースは、紐を引っ張ってホックに留めるシンプルな構造が特徴。


どんなに時代が変化しても、その変化に対応して”今”の空気感を佇まいとして表現し続ければ、それが<ベラーゴ>のアイデンティティになるという。

自身のモノ作りへのスタンスもこう語った。

「ベラーゴ帝国を作りたいんです(一同笑)。技術は表現の手段だと思っているので、<ベラーゴ>のスタイルを創って、その中で面白いモノを作りたい」と。

笑顔を見せながら冗談交じりに応えた牛尾の眼差しの先は、既に新たな"佇まい"が見えているはずだ。


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