2018.07.04 update

【インタビュー】広本 敦|シンプルさに「意味と理由」がある<YOAK/ヨーク>のスニーカー

    1. 普遍的に長く履けるスニーカーブランド
    2. コンセプトは「ジャケットとシャツに合わせる靴」
    3. ブランド初の別注モデルが伊勢丹新宿店限定で登場
スニーカーブランド­<YOAK/ヨーク>のデザイナー広本 敦氏の足元は、3年間履いているという同ブランドのファーストモデル「ULYSE」。履き心地を訊くと、「時を経ても心地よく履けますよ」と一言。ファッショントレンドは刻々と変わっていくが、3年前のモデルも今の雰囲気に合わせられるデザインにしているのが<ヨーク>の特徴だ。


”ジャケットやシャツに合わせることを前提に作る”というブランド哲学のもと、東京で生まれたスニーカーブランド<YOAK/ヨーク>。先日公開された動画では、これまでカメラの入ることが出来なかった生産背景を特別に撮影している。­

普遍的に長く履けるスニーカーブランド


<ヨーク>は、無駄を削ぎ落としたミニマルなデザインとこだわりの機能性でスタイルを格上げするスニーカーブランド。

デザイナーの広本氏が言う「余計なことはしない、シンプルなデザインを心がけていて、それが結局他にないものに繋がっていると思います」という言葉は、<ヨーク>の縫製や裁断、吊り込み、ソールの接着まで職人の手で丁寧に作られている東京での生産背景を伝える上掲のムービーでもよくわかる。


<YOAK/ヨーク>のデザイナー広本 敦氏



――スニーカーブームは長く続いていますが、作り手としてはどう感じていますか?

広本 ブームというより世の中に定着してきたと思いますが、トレンドが強く出ているマーケットになっているので、「今年買ったけど来年履けない」ものも多いと思います。<ヨーク>のスニーカーは、普遍的に長く履いていただけるものを目指して作っているので、時代には逆行していますね。ただ、スポーツブランドやラグジュアリーブランドのスニーカーとは違うポジションで、常にアップデートすることは意識しています。

――<ヨーク>を立ち上げる前もスニーカーに関わっていたのですか。

広本 グラフィックの学校を出ましたが、ファッション業界で働きたくて、大手スポーツメーカーに入社。シューズ部門の企画に配属されてイタリアのファッションブランドのスニーカーのデザインを6年ほど手がけました。そこでの仕事は、“ブランドらしさ”が常に問われるのと、スポーツブランドなので機能性やパフォーマンスの部分を意識して作っていました。


――その後に、商社に転職されたとか。

広本 はい。総合商社で10年ほど海外ブランドのMD(マーチャンダイザー)を務めました。多いときは4~5ブランドのMDを兼任し、毎月のように海外出張があり、カンファレンスや生産工場へ足を運びました。このときにブランドビジネスの管理や物流、PRなどを学びました。

─―ブランドビジネスに関わっていて、どうしてスニーカーブランドを作ろうと思ったのですか。

広本 商社時代は仕事も満足していたのですが、メーカー、小売、ディストリビューターという相互関係について考えることが多くなりました。アパレルの業界の“商売の仕方やサイクル”などに疑問があって、組織の中で自分の新しい可能性を具現化する難しさも感じていました。

コンセプトは「ジャケットとシャツに合わせる靴」



左:スニーカー「ULYSE」24,840円
中:スニーカー「LUKE」25,920円
右:スニーカー「STANLEY」25,920円


――そういう疑問や難しさから、<ヨーク>が立ち上がったわけですね。

広本 自分の中ではごく自然な流れでした。頭でっかちになった自分を一度リセットし、自分のスキルを活かせることが「スニーカーブランドを作る」ことでした。商品、生産、販売、PRのすべてに意味があり、最適化されたブランドを世の中に出したかった。

――その「最適化」がシンプルなデザインに繋がっていくと。

広本 人もブランドも変わったモノがかっこいいとされる風潮へのアンチテーゼとして「シンプルで、引き算していくデザイン」が、他にないものに繋がっていきました。デザインのこだわりは、とにかくシンプルにかっこいいモノです。<ヨーク>は余計なことはしない、シンプルなデザインを心がけていて、限られた範囲の中で“引いていく”作業は楽しいですね。

 


左:スニーカー「LILY」22,680円
右:スニーカー「ULYSE」24,840円


――<ヨーク>の「ジャケットとシャツに合わせる靴」というコンセプトもありそうでないですね。

広本 <ヨーク>は年齢ではなくスタイルで提案しています。シャツとジャケットというコンセプトから“素材と縫製”にこだわるため、生産は東京で半世紀以上靴を作っている工場で行っています。メイドインジャパンにこだわるというより、コンセプトを具現化するためには日本でしか作れないという“意味のあるメイドインジャパン”になっています。

――製法も革靴のように吊り込みを取り入れていたり、とても本格的です。

広本 革靴と解釈できるデザインと作りですが、スニーカーの気軽さで楽しんでほしいですね。<ヨーク>はブランドの立ち上げから、ライニング(シューズ内)はつま先まで豚革を贅沢に使い、足全体を包み込む心地よいフィッティングが味わえます、また、インソールには取り外し可能な低反発メモリーフォームタイプを採用することで高いフィット感をもたらします。


――本当にこの作りでこのプライス設定は素晴らしいと思います。

広本 スニーカーが好きな人ほど価値は感じていただけると思います。今日自分が履いているモデル「ULYSE」はファーストモデルで、「古き良き時代のテニスシューズ」をデザインソースに上品さを追求。ハードになりすぎないようにスエードの色のグラデーションを変えたりしています。素材の豚革は足の当たりが柔らかく、履いたときに独特の足入れの良さを感じていただけます。


スニーカー「ULYSE」24,840円
*伊勢丹新宿店限定


ブランド初の別注モデルが伊勢丹新宿店限定で登場


――<ヨーク>はスタートからネット販売のみでした。

広本 スタートはECサイト限定の展開で、一切卸販売は行わないというコンセプトでした。しかし、スタイリストや雑誌の編集者から掲載の引き合いが多く、メディアでの露出が多くなってくると、「店頭で見たい、試着してみたい」という問い合わせが増えてきたので、昨年末のメンズ館でのポップアップを皮切りに、本格的に卸販売も始めました。

――今回のポップアップに登場するイセタンメンズ別注の「ULYSE TRIPLE BLACK」が、ブランド初の別注モデルだとか。

広本 コラボや別注もたくさんお話をいただきましたが、ブランドで続けていく上で意味があることをしたいと思っていました。今日自分が履いているモデルのソールまで黒にした“トリプルブラック仕様”をメンズ館でリリースするのは、自然な流れです。すんなり作ることができて、タンにあるゴールドのロゴが際立つ大人っぽい仕上がりになりました。

――ブランド3年目で、次のステップは?

広本 自分が<ヨーク>でやりたかったのは、「自分で作って、話して、納得して買っていただく」こと。業界のやり方や既存の慣習を踏襲しないスタイルでやってきて手応えは十分感じています。これからは、日本で生産している靴を世界の知らない人に履いてほしい。一つひとつ意味のあるプロダクトと販売手法で、思考停止せずに、当たり前のことにこだわってやっていきたいですね。


Photo:SUZUKI SHIMPEI
Text:Makoto Kajii

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