2016.03.03 update

【インタビュー】ニコライ・バーグマンによる「錦上添花」の世界|石川県の伝統工芸とコラボレーションによる「新しい用の美」を語る

「片手にライカ、片手に花」というジェントルマン、チャーリー・ヴァイスの親友であるフラワーアーティストのニコライ・バーグマンさんが、豊かな自然と優れた芸術文化を時代と共に重ね、着物(加賀友禅)やスーツ(牛首紬)、九谷焼、輪島塗など世界レベルの工芸品を生み出す石川県の伝統工芸とコラボレーション。ニコライさんが金沢を訪れ、作家たちとアイデアを出しながら作ったコレクションが、3月2日(水)より8階=THE GALLERY by CHALIE VICEで展示販売されます。


未来に繋げる、新しい伝統を創る

チャーリー・ヴァイスはこう語ります。「『錦上添花』という言葉があります。美しいものに、さらに美しいものを重ねることを花と錦に例えたこの言葉を借りるなら、ニコライ・バーグマンは花たちをさらに美しくする『錦』を見つける天才。彼にかかれば、花も錦も自身の持つ美しさを超えて、新しい境地を切り開いてゆくのです」と。

――ニコライさんは2014年10月に太宰府天満宮と宝満宮竈門神社で「1100年の伝統と革新的フラワーアートの融合『伝統開花』」展を開催しましたが、今回は石川県の伝統工芸へのチャレンジですね。


石川県は、「金沢・北陸新幹線・金沢21世紀美術館」というイメージでしたが、今回、多くの職人さんと関わってとても面白かったです。どのジャンルの職人も毎日細かな作業を、小さい頃から人生を賭けて取り組んでいて尊敬しています。でも、現場は高齢化や跡継ぎ問題などを抱えていて、「伝統工芸にとって大事な今の時期に、より興味を持ってもらうこと」に取り組まなければと思いました。

――伝統工芸にも新しい風が必要と感じたわけですか。

そうですね。確かに若い職人さんもいますが、今の時代に合わせていかないと取り残されてしまうなと。日本の伝統工芸は世界からも注目されていますが、伝統を守っているだけでは難しいです。新しいエッセンスを加えることは一日ではできませんが、歴史にチャレンジしていかないと。加賀友禅も牛首紬も九谷焼、輪島塗もどれもチャレンジしがいのある歴史を持っています。



紫陽花をベースに、頭文字が隠された家紋

――たとえば、どんな風にチャレンジされたんですか?


石川県輪島で江戸時代・享保期頃から引き継がれる輪島塗は漆(うるし)をかけるのですが、僕の最初のアイデアは漆をかけないで木の素地のみを提案しました。器の新しいイメージを創りたかったんですが、「漆をかけないと使い道が限られる」と指摘されたことがあります。でも、重箱の塗面のコンビネーションは驚かれました。また、スカーフは、僕が大好きな紫陽花(あじさい)をモチーフに、八重咲きなどさまざまな紫陽花の美しさをオリジナルでデザイン。クオリティの高いアイテムが出来上がりました。

――器の家紋が素敵ですね。


今回のコラボレーションテーマである紫陽花の中に、頭文字の「NB」が隠れている家紋を作りました。紫陽花は日本人には5~6月の梅雨時の花のイメージでしょうが、紫陽花は一年中あって、さまざまな大きさの花があり、季節によって色も変わります。秋には紅葉する紫陽花もあるんですよ。

――紫陽花を好きになったきっかけは。

20年ぐらい前に鎌倉で紫陽花を見て「すごい!」と思いました。それ以来、僕の中での日本とのつながりのイメージは紫陽花です。着物も紫陽花をモチーフにしましたが、いろんな色柄・模様が混ざって、日本の伝統を革新する雰囲気が出せたと思います。


モノを通して会話が広がっていく幸せ


――今回はメンズ館8階=THE GALLELY by CHALIE VICEでの展示ですが、見どころを教えてください。


僕の出身のデンマークはデザインが有名ですが、どれも「使って気持ちの良いデザイン」が大きな特徴です。デザインは使ってみてわかることがたくさんあるので、たとえば輪島塗の重箱や器を伊勢丹のお客さまの男性がどう使ってくれるかに興味があります。重箱を腕時計入れのコレクションボックスにしたり、お気に入りのネクタイを収納したり、あるいは器に花を飾ったり。いろんなアイデアで使いこなしてほしいですね。

――それぞれの商品の作りのこだわりも教えてください。

僕は表も裏も同じくらいキレイにすることに心がけているので、重箱や器なども裏までしっかり見てほしい。それと、この世のモノは美しいだけでは長持ちしません。実際に着てみて、使ってみて、そこから会話が広がっていくのを楽しんでほしいです。自分の花のコンセプトも「モノを通して会話になる」というもの。感動や気持ちを伝えられることほど素晴らしいことはありません。今回はどれも石川県を代表する伝統工芸なので、それぞれの歴史背景も知っていただき、ぜひ現代の「用の美」としてお使いください。

 Chalie Vice meets Nicolai Bergmann’s Works「錦上添花」
□3月2日(水)~3月15日(火)
□THE GALLERY by CHALIE VICE

限定商品
加賀友禅とのコラボレーションによるスカーフ
オーダーメイドによる牛首紬オリジナルスーツのお仕立て
九谷焼職人による花瓶・カップ&ソーサー
輪島塗りのオリジナル家紋入り食器セット(お椀やお盆などのセット)
ほか


Photo:Ozawa Tatsuya

*価格はすべて、税込です。

お問い合わせ
03-3352-1111(大代表)