現代のリアルニーズに応える<トレーディングポスト>のフットウェア開発力を探る|THE GENTLEMEN CLOTHING & ACCESSORY AUTUMN & WINTER 2026
スニーカーとは異なるきちんと感を演出する靴、休日の装いを引き締めるファッションアイテム、修理をしながら長く付き合うプロダクト。革靴を選ぶ理由が細分化した今、専門店には一人ひとりのリアルなニーズへ応える提案力が求められています。
そんな変化を、長年にわたり国内外の優れた紳士靴を扱ってきた<Trading Post/トレーディングポスト>は、どのように捉え、オリジナルシューズの物作りへ反映しているのでしょうか。
伊勢丹新宿店 メンズ館の紳士靴アシスタントバイヤー、商品開発を担う<トレーディングポスト>の商品担当、日々お客さまと向き合う売場スタッフが語り合いました。
現代の革靴ニーズを知る3人が対談
(左)関本光幸氏_プレステージシューズトレーディングポスト伊勢丹新宿店チーフ
(中)村井久哲氏_プレステージシューズトレーディングポスト商品担当
(右)池内啓介_伊勢丹新宿店 メンズ館紳士靴アシスタントバイヤー
本記事では、今季発刊の『THE GENTLEMEN CLOTHING & ACCESSORY AUTUMN & WINTER 2026』で紹介した対談を、誌面に収まりきらなかったエピソードとともに深掘りします。
スニーカーが定着したからこそ、革靴の役割は広がった
池内 スニーカーが日常に定着する一方、革靴を改めて選んで履こうとする潮流も見られます。ビジネスだけでなく、装いを引き締めたり、ファッションとして楽しんだりと、求められる役割も広がっていますよね。
関本 店頭でもそれは感じます。きれいめな装いやクラシックな着こなしへの関心が再燃し、スニーカーとは異なる足元を求める方が増えています。出社機会が戻り、改めて革靴が必要になったという声もあります。
池内 毎日決まって履くものではなくなったからこそ、場面に応じて選ぶ意識も強くなったのでしょうか?
関本 そうですね。仕事ではスニーカーを履き、一方、レストランで食事をする日や大切な人と会う日は革靴にするという方もいらっしゃいます。単なるマナーとしてではなく、「今日は足元まできちんと見せたい」という自己表現のために選ばれている印象です。
村井 海外のマーケットを見ても、同じような変化を感じます。コロナ禍以降、スーツを着て週5日革靴を履く機会は減りました。その一方で、各ブランドはローファーやUチップなど、スニーカーとは異なるカジュアルな革靴の開発に力を入れています。
池内 スニーカー一辺倒だったところから、少し揺り戻しが起きているのかもしれませんね。
村井 特に若い方にとって、スニーカーは子どもの頃から履いている身近なものです。だからこそ、革靴のほうを新鮮に感じ、休日のファッションへ取り入れる方が増えています。ローファーやUチップのような、今のワイドなパンツとも相性のいい革靴が選ばれていますね。
関本 最近は若いお客さまからも、修理について相談されることが増えました。革靴は履き込んで味を出したり、磨いて表情を変えたりできます。フィッティングが合えば、「スニーカーよりも履きやすい」と話される方もいらっしゃいます。
池内 革靴が、ビジネススーツに付随するものではなく、装いを引き締める靴、ファッションを楽しむ靴、長く付き合う靴へと役割を広げているわけですね。
池内 そうした変化に応えるように、オリジナルブランドのシューズを幅広く展開されていますね。今回の誌面では「Formal Style」「Fashionable Style」「Functional Style」の三つに分類してご紹介しています。
村井 今回ご紹介している靴はすべて日本の工場で生産しています。長年インポートシューズを扱い、優れた靴を見てきた経験と、お客さまの声を活かしながら、木型や素材、履くシーンまで私たちが考えて企画しています。
「Formal Style
匠が手がける上質なドレスライン」——村井氏
池内 その一つが、フォーマルな場にも履ける上質なドレスライン「プレステージライン」ですね。
村井 目指したのは、インポートに引けを取らない品質です。上質な革や意匠、全体のバランスにこだわり、ビスポークシューズに見られる意匠も取り入れています。
池内 たとえば「TP1984」には、どのような特徴がありますか。
村井 「TP1984」は<トレーディングポスト>の創業年を冠した、オリジナルを代表するモデルです。前足部はグッドイヤーウェルト、絞り込んだウエスト部分はマッケイで縫い上げる、ハイブリッドな製法を採用しています。フィドルバックやシームレスバックといったビスポーク由来の意匠も取り入れ、立体的でエレガントな佇まいを追求しました。
池内 細かな仕様を知らなくても、ひと目で上質さが伝わります。
関本 店頭でも、手に取った瞬間に「ほかの靴とは何かが違う」と感じる方がいらっしゃいます。スペックを詳しく知らなくても、革の質やウエストの絞り、ソールの立体感が、ひとつの“オーラ”として伝わるのでしょうね。
「2503」:89,100円
華やかなウイングチップの意匠と、サイドエラスティックを備えたレイジーマン仕様を組み合わせたモデル。レースアップシューズらしい端正さを保ちながら、紐を結び直さずに脱ぎ履きも楽々。フォーマルな場面にも映え、日本の生活様式にも適した実用的な一足です。
「TP1984」:129,800円
ブランドの創業年をモデル名に冠した、プレステージラインの代表作。前足部を堅牢なグッドイヤーウェルト、絞り込んだウエスト部をマッケイで縫うハイブリッド製法を採用しています。フィドルバックやシームレスバックといったビスポーク由来の意匠が、立体的でエレガントな佇まいを生み出します。
「TP2026」:129,800円
2026年のイヤーモデルとして登場した、オリジナルシューズのフラッグシップ。一枚革を贅沢に用いたアッパーに、縫い目ではなくパンチングによってキャップトウを表現しています。端正なストレートチップの中に、既製靴の枠を超えるような職人技と緊張感を宿したモデルです。
*掲載品は、実際の商品と仕様が異なる場合がございます。予めご了承ください。
「Fashionable Style
休日でも履きやすい、絶妙なカジュアル感が魅力」——池内
池内 一方、「Fashionable Style」に分類した「2315」や「260112」には、休日にも取り入れやすい雰囲気があります。
村井 このカテゴリーでは、過去に扱っていたモデルや<トレーディングポスト>のアーカイブをデザインソースにしています。ただし、昔の靴をそのまま復刻するわけではありません。当時の木型は幅広で甲が高く、現代の足型や装いには合いにくい場合もあるため、踵まわりや甲の高さ、ノーズのバランスを調整しています。
池内 見た目のバランスも、プレステージラインとは異なりますね。
村井 エレガントに見せるためにコバの張り出しを極限まで抑えるのではなく、適度にボリュームを残し、トウにも丸みを持たせています。ショートノーズのバランスやステッチの表情、ヴィンテージ調のラバーソールなどによって、かしこまりすぎない雰囲気に仕上げました。
関本 革靴に慣れていない方でも取り入れやすいと思います。きれいに見えながら、ビジネスシューズ然としすぎていない。ジャケットスタイルだけでなく、休日のワイドパンツやデニムにも合わせやすいですね。
池内 革靴でありながら、休日のスタイルを格上げするファッションアイテムとして楽しめるんですね。
村井 そうです。ただし、ファッションに寄せすぎると、数年後に「その時代に流行した靴」に見えてしまいます。クラシックなデザインは踏襲しながら、ノーズの長さやコバの張り出し、ソールの選び方を少しずつアップデートする。そのさじ加減を大切にしています。
「260112」75,900円
「2315」:89,100円
「RS-1」97,900円
「260101」69,300円
*すべて牛革
□伊勢丹新宿店 メンズ館地下1階 紳士靴
「260112」75,900円
ヴィンテージシューズを思わせるデザインと、張り出したコバが印象的なローファー。アウトソールには、グリップ力と耐久性に優れた「ドクターソール」を採用しています。デニムなどのカジュアルな装いはもちろん、ビジカジのセットアップにも合わせやすい一足です。
「2315」89,100円
丸みを帯びたトウと程よいボリューム感が、フレンチライクな表情を生むUチップ。端正でありながらかしこまりすぎず、ビジネススタイルから休日のワイドパンツまで幅広く対応します。革靴に不慣れな方も取り入れやすい、柔らかな佇まいが魅力です。
「RS-1」97,900円
ミリタリー由来のオフィサーシューズを、現代の着こなしに合わせて再解釈したプレーントウ。ボリュームを持たせたラウンドトウが程よいラギッド感を演出する一方、甲まわりから踵にかけては立体的な木型でフィット感を追求しています。グリップ力と耐久性に優れた「ドクターソール」を採用し、ドレスからカジュアルまで幅広いスタイルに対応します。
「260101」69,300円
<トレーディングポスト>創業当時に展開していた、ショートノーズのクラシックスタイルを現代的に再構築したストレートチップ。普遍的なドレスシューズの端正さを備えながら、どこか懐かしく愛嬌のある表情が魅力です。フォーマルやビジネスはもちろん、アメトラやアメカジの足元にも違和感なく合わせられます。
*掲載品は、実際の商品と仕様が異なる場合がございます。予めご了承ください。
「Functional Style
リアルニーズに応える、実用性の高さが特徴」——関本氏
池内 さらに「Functional Style」に分類した「T601」と「T701」のように、機能性を重視したモデルも充実していますね。
村井 これらは、お客さまの〝楽に履きたい〟という声から生まれました。見た目のきちんと感は保ちながら、水に強い革やスエードを使い、履き心地にも配慮しています。「T601」は水に強い国産レザーとダイナイトソールを採用し、日本人の足に合わせた木型にもこだわっています。
関本 履き心地や天候への対応力は、今の革靴選びで欠かせない条件になっていますから。
村井 「T701」は、快適で柔らかな履き心地を追求したローファーです。水に強いスエードを使い、軽やかなソールやアンライニング仕様によって、スニーカーに近い感覚で履けるようにしています。
池内 ハイエンドなドレスライン、ファッション性を楽しむモデル、機能性の高いモデル。それぞれ異なるニーズに応えながら、専門店として培った知見が活かされているようです。
村井 「プレステージライン」では品質を追求し、ファッション性のあるモデルでは新しい表現を提案する。高機能なモデルではお客さまの声に応える。役割に合わせて、物作りの考え方も変えています。
「T701」49,500円
水に強いスエードを用いながら、革靴とは思えないほど快適で柔らかな履き心地を実現したローファー。軽やかなエクストラライトソール、足当たりを和らげるアンライニング仕様に加え、中敷きの下にはスポーツブランドにも採用される高性能スポンジを搭載しています。きちんと感を保ちながら、スニーカー感覚で履ける実用モデルです。
「T601」77,000円
革自体に水への強さを持たせた国産レザーと、雨天時にも安定感のあるダイナイトソールを組み合わせたモデル。日本人の足型データを活かした木型によって、踵から土踏まずまでのフィット感にも配慮しています。グッドイヤーウェルト製法のため、修理を重ねながら長く履けるのも魅力です。
*掲載品は、実際の商品と仕様が異なる場合がございます。予めご了承ください。
変わらない原型を、時代に合わせてアップデートする
池内 考え方の異なる三つのスタイルですが、共通していることはありますか?村井 日本人の足や体型に合うバランスを考えること、そして長く履ける靴にすることです。クラシックシューズの基本は変わりませんが、つま先の長さやソールのボリュームなどは時代とともに変化します。原型を守りながら、今に合う形へ進化させています。
関本 スニーカーをその時々の“流行曲”にたとえるなら、革靴は長く聴き継がれる“スタンダードナンバー”のようなもの。買った当時の空気や思い出と一緒に、何年後でも楽しめます。
村井 革靴は履き込み、磨き、修理しながら自分のものにしていけます。以前、お父さまの遺品から見つかった約20年前の<トレーディングポスト>の靴を、息子さんが「形見として履きたい」と修理に持ち込まれたこともありました。革靴は世代を超えて残ることもあるんです。
池内 革靴に求めるものが細分化した今、それぞれに明確な答えを用意できる。そこが<トレーディングポスト>の強みに思えます。
村井 クラシックな物作りを守りながら、時代の装いや暮らしに合わせて進化していく。今後は革靴だけでなく、スニーカーやサンダルも含めたフットウェアブランドとして提案の幅を広げていきたいですね。
『THE GENTLEMEN CLOTHING & ACCESSORY AUTUMN & WINTER 2026』発刊!
Text:ISETAN MEN'S net
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