追いかけるのは母、そして祖父の背中


互いに意見を出し合い形にしていく作業は、ときにデザイナーの師匠であり先輩である母親に意見を求めることもあるそうだが、基本的に欧子さんはノータッチを決め込んでいる。我が子が家業を継ぐことは珍しいことではないが、デザイナーという職を3世代にわたって継ぐことには、師としても母親としても複雑な思いがあるのでは―――。

「父のブランドを手伝ってきた私が、初めて自身のブランド<H.at/エイチ エイティー>を立ち上げ、ファーストコレクションを見せたとき、父は細かいところまでたくさんの意見をくれました。でも、ひと通り話を聞いた私はその意見を取り入れませんでした。父の意見を取り入れたら、それは私が自分のブランドをつくる意味がなくなってしまうからです。その結論に至ってからは、父の意見を求めることはしなくなったし、父も私に意見することはありませんでした」。


「だから私も子どもたちのブランドに意見はしません」とは欧子さんの強い覚悟だ。
インターンとして母から手ほどきを受けた早姫さんは、その手にどこか母の仕事の流儀のようなものを受け継いでいると感じているが、白紙の翔さんにはその感覚はない。「いまは目にするもの、学校で学ぶもの、すべてをいかに帽子に取り入れられるかを考えることに夢中です」と無邪気に笑う翔さんは、自分のスタイリングも帽子から入るという、根っからの帽子クリエイターだ。


「弟は自社のモノづくりの基礎的な部分を学んでいない分、素直に発想がユニークだなと思えるところがある。それをどう表現するか考えられるのは、基礎知識を学んだ私が手伝うべき部分」という早姫さん言葉には頼もしさを感じる。「母は憧れの存在である反面、ライバルもである。負けたくないと感じる部分もある」とふたりとも力強く言い切った。

しっかり弟を支える姉と、自由な創造力をもつ弟。二人の孫たちの巣立ちを、天国の巨匠もきっと見守っているだろう。

イベント情報

<saki et show>帽子プロモーション

□11月21日(水)~27日(火)
□メンズ館1階=シーズン雑貨・装身具

デザイナー来店情報
デザイナー石田早姫氏と石田翔氏が来店し、お客さまへ帽子のコーディネートアドバイスを行います。
□11月23日(金)・24日(土) 各日午後1時~5時
*都合により来店予定が中止、または変更、時間帯により不在の場合がございます。予めご了承ください。

Text:Yasuyuki Ikeda
Photo:Taku Fujii

お問い合わせ
メンズ館1階=シーズン雑貨・装身具
03-3352-1111(大代表)
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