2015.06.11 update

Creators VOICE #2 | 髙栁成克<kiryuyrik>

人々を魅了する、モノに込められた思い。ブランドが誕生し、成長するに至った道程。“可能な限りそのブランドのクリエーターの言葉で語ってもらいたい”という思いでスタートした「Creators VOICE」 。普段見られないクリエーターの素顔を見つめることでデザインを通して創られる五感で感じる“豊かさ”の理由について考えたいと思います。

第2回目のゲストは<kiryuyrik>デザイナー・髙栁成克。

あえてデザイン画を省き、A4の紙にびっしり描いた新作イメージを眺めながらコレクション製作に取りかかる、<kiryuyrik(キリュウキリュウ)>。デザイナー、髙栁成克の服作りには、パタンナーとしてキャリアを積んだ職人気質なポリシーがある。


「シーズン毎のテーマは設けず、全体のバランスを意識しながら自分の経験値で“ベストだ”と自信を持てる服作りを大事にしています。だから雰囲気のあるデザイン画を一枚一枚描くよりも頭の中にあるイメージをパッと見て精査できる企画書(※1)を作ることの方が私にとっては重要なことなんです。」

(※1)髙栁氏がコレクション制作前に必ず書き起こす新作の全体イメージ図。

パタンナー出身で、現在も自らの手でメインの型紙を起こしている髙栁氏。

「頭に蓄積されたディテイルやアイディアの細部にわたり、その点と点を結ぶ作業をコレクションごとに繰り返してきました。この作業が、デザインを型紙に起こすときに自分の中でミスマッチが生じにくく、ハイクオリティに繋がっているのだと思います。

クオリティといっても、決して素材が良い=良い服ということではなくて。素材に適した型紙や縫製等を行うことがベスト。だからシルエット一つとっても、構築的で体形を補正するときもあれば、体形に合わせて馴染むようにパターンメイクすることもあります。上品に見えるアウトラインを常に心掛けて、あらゆることを適材適所で使い分けています。」


「少しテクニカルな話になりますが、紳士服のテーラードは平面的な作図が主流で、逆にレディースは立体的。ジェンダーフリーな現代ファッションにはどちらも必要性を感じて取り入れていますが、あくまで時代に合わせ過ぎることは考えていません。あえて言うなら、意識する程度。今季のジャケットもスリットの高さやボタン位置を調整して見た目は細身でも窮屈に感じないように着心地まで気を配りました。無意識のつもりではあるのですが、イージーな服が求められる今の時代感が投影されているのだと思います。

洋服のバッググラウンドを色々語ってきましたが、いちばんは理屈抜きで“格好いいもの”が作りたいという純粋な思いです。それはきっと,僕にとっても、世の中の男性にとっても普遍的なもののはず。個人オーダーをいただいたスーツの型紙を医療のカルテのように大事に保管しています。世の中で求められるデータが何百と集約されているので、そこに次へのヒントがあったり…。」


「さらに、伊勢丹との意見交換がきっかけで2009年から取り組んだキッズラインの展開も良い経験になりました。子供は純粋で、着心地にも敏感。チクチクしていたり、肌触りの悪いものは絶対に着たくないですよね。そこでの新しい発見が、大人の服に生かせるアイディアにつながったりもして…。お客様のことを常に意識しながら取り組むイセタンメンズとの長い付き合いが<kiryuyrik>のクオリティの支えとなり、ブランドの成長に繋がっていると改めて感じています。」


デザイナーである前にパタンナーだと語る高柳氏の思い入れある一品は、学生のときから20年以上愛用するハサミや、その他の仕事には欠かせない道具たち。それぞれにレザーを巻くなど、自ら使いやすいようにカスタマイズされている。長年愛用するフレグランスもあわせて。

Text:MIYATA KEIICHIRO

髙栁 成克
1973年生まれ。
文化服装学院卒業後、(株)ヨウジヤマモトにて企画とパターンを学ぶ。2002年より<kiryuyrik>コレクション発表。
表面的な美しさだけではなく、機能性も重視した"機能美"のエレガントな服を展開。特に<kiryuyrik>の機能美の代表的なアイテムとして、ジャケットは絶対的な評価を得ている。また、キッズラインは"大人が嫉妬する子供服"として伊勢丹新宿店本館6階=リ・スタイル キッズにてセレモニーウエアとしても注目の的。


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