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流行と歴史、その狭間で─。ベルルッティのものづくり

押しも押されもせぬ、そんな形容がしっくりくるフランスの老舗。
独自の鞣し技術、染色法を開発し、ビジネスエリートのみならず、
ピカソやウォーホルら、芸術家にも多くのファンをもった。
メンズ館4階でのオープンを記念して、日本先行発売の4アイテムのコレクションを紹介する。

紳士靴の可能性を切り拓く、美に貫かれた進取の精神

 1895年、初代当主であるアレッサンドロ・ベルルッティがパリにて創業したベルルッティ。表からは縫い目が見えない一枚革でつくる「アレッサンドロ」や、女性として初めて当主となった4代目のオルガ・ベルルッティがアンディ・ウォーホルのためにつくった「アンディ」など、紳士靴の世界では後世まで名を残すようなモデルを世に送り出してきた。
 その魅力として真っ先に挙げられるのが、革である。ベジタブルタンニン鞣しとクロム鞣しの双方を用いて、しなやかで密着性の高いレザーをつくり出した。「ヴェネチアレザー」と呼ばれるこの高級素材は、ベルルッティ独自のマテリアルとして、メゾンのアイデンティティの一つになっている。もう一つの魅力が、こちらも唯一無二といっていい染色技法「パティーヌ」である。1980年代に、先述のオルガによって確立された手法で、染料を手作業により塗布することで、革は独特な風合いを帯びる。時間とともに艶が出て、部分的には色が抜ける。それにより、革全体に自然な諧調が生まれ、靴は個性を宿す。それまではほとんどが黒か茶色しかなく、単調なイメージだった紳士靴に、“色”という新たな愉しみを与えたのだ。
 メンズ館とは2年前から特別なコレクションを制作しているが、今回の日本先行発売のブルーのコレクションにも“門外不出”の染色技法が使われている。さらに、18世紀に書かれた手紙から着想を得た「スクリット」カリグラフィーも華を添える。今季は、カジュアルスタイルにマッチするスニーカーとトートバッグ、ドレススタイルにさらなる品格を与えるローファーとブリーフケース、計4アイテムを展開。いずれもベストセラーモデルゆえ、初めてベルルッティに触れる方でも安心して手を出せるだろう。
 また、新しい動向にも注目したい。2012年からスタートしたプレタポルテのコレクションも着々とファンを増やしているが、今年の春夏からは名実ともに備えたトップデザイナーの一人である、クリス・ヴァン・アッシュをクリエイティブ・ディレクターとして起用。1月に行われたパリコレクションでも称賛をもって受け入れられ、メゾンは新たなタームに入った。
 古きに習い、流行も柔軟に取り入れる─。歴史と経験、腕利きの職人たち、そして、新たなる感性。そこには、今のベルルッティにしかつくり出せない美しさがある。今季は、その美に触れる絶好の機会である。

ベルルッティ

ドレススタイルにおいて、高い支持を得る両者。さりげなく入ったカリグラフィーが、知的なラグジュアリーさを主張してくれる。ビジネスの相棒としても頼りになる。
〈ベルルッティ〉
バッグ 416,880円(牛革/28×39×7cm)
シューズ286,200円(牛革)
メンズ館4階=メンズラグジュアリー

ベルルッティ

「プレイタイム」と名づけられたスニーカーも、ダークネイビーで表現されることで、ぐっと大人っぽく。トートバッグ「トゥジュール」もまた然り。オフシーンをシックに彩る。
スニーカー 185,760円(牛革)
トートバッグ 339,120円
(牛革/26.5×44.5×13cm)
メンズ館4階=メンズラグジュアリー

New Designer & Collection

モダンな薫り漂うデザインに、進化の証しを見ることができる。
プレタポルテではクリス・ヴァン・アッシュが得意とする、クラシックでエレガントな男性像を追求。
ファンならずとも注目のコレクションだ。

クリス・ヴァン・アッシュ

クリス・ヴァン・アッシュ

1976年ベルギー生まれ。アントワープ王立芸術アカデミーを卒業。2005年には自身の名を冠したブランドをスタートさせる。