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BLBG株式会社代表取締役 田窪寿保氏に学ぶ、上質旅のつくり方

「自分の価値観を満たす、心地よい時間や空間を味わうこと」こそが、
ラグジュアリーな旅だと田窪寿保氏は語る。
世界中を見てきた“旅の達人”に、その真意と大切な心構えをうかがった。

居心地がよいと感じられる旅からは心の豊かさが得られる

 学生の頃は、バックパッカーとして極力お金を使わずに世界を巡った田窪氏。社会人となり、ヴァージン・アトランティック航空に入社してからは、機内やホテルで一流のサービスを受けることの素晴らしさを身をもって感じてきたと語る。 「高級なホテルに宿泊したり、著名なレストランで食事をすることが、必ずしもラグジュアリーな旅を体現することだと僕は思っていません。もっとも大切なのは、旅を通して心から居心地がいいと思えるかどうか。たとえば飛行機のファーストクラスに乗り、ファイブスターのホテルに泊まっても、上質なサービスの活用法や楽しみ方を知らなければ、心地よく過ごすことはできないはずです。ホテルに長期滞在する場合は、名刺をつくってもらえたりもするし、バトラーに的確に指示を出せば、アイロンがけだってやってもらえる。やはり経験を積んでいかないと、そういうサービスをスマートに利用して、快適には過ごせないですよね」
 高級車を乗りこなすにも経験や技術が必要なように、ラグジュアリーな世界観やサービスを堪能するには、まず“こなし方”を知る必要があると田窪氏はいう。 「自分もそういう経験と年齢を重ねて、上質な世界観を楽しめるようになってから、旅は見た目の豪華さよりも、居心地のよさが大切だと気づきました。結局、あらゆる面で心の豊かさが得られる旅こそが、ラグジュアリーな旅だと思います。そのために上質なサービスを求めるなら、やはり、それに相応しい立ち居振舞いや、ツールの使い方などを学ぶ必要があるんですよ」

田窪寿保 たくぼ・としやす
1966年東京生まれ。BLBG株式会社代表取締役。ヴァージン・アトランティック航空を経て98年より現職。英国文化に造詣が深い。著書に『ジェームズ・ボンド 仕事の流儀』(講談社)など。

〈グローブ・トロッター〉のトロリーケース
田窪氏が旅へ出かける際の30年来の相棒がグローブ・トロッターだ。ヴァルカン・ファイバーの経年変化を楽しみながら、旅の思い出を共に刻んでいるという。

 質の高いサービスを受けるには、上質な空間にマッチする品格のある服装をし、紳士たるマナーを身につけなければ、本当の意味で心の豊かさは得られない。 「旅行に行くと時計と靴はよく見られると言われますが、それと同等に鞄選びは大切です。自分はグローブ・トロッターのラゲッジと30年近く付き合っています。使っていると経年変化で深みが増しますし、目に見えないところのつくりのよさや、主張しないデザインも、英国でよくいわれる“アンダーステイテッド エレガンス”を備えたものだと思います」
 ラグジュアリーな旅に持っていくものは、華やかでゴージャスなものでは決してないということだ。 「服に関してもそうですが、きらびやかには見えないけれど、しっかりとその人にフィットしていることが重要です。控えめでも裏地や縫製など、目に見えないところに凝っていて、使う人に馴染んでいる。旅に行くとき身につけるなら、そういうもののほうが心地いいんですよ」

愛用のラゲッジには、自身が所属する英国のカークラブや雑誌のステッカーが貼られている。

よく利用しているお気に入りホテルのアメニティ。旅行の際も重宝する。

田窪寿保氏の華麗なる旅日記

2015~
2016

英国王室が主催する
ロイヤルアスコットに参加

「伝統的な社交の場。近くに見えたのは、なんと女王陛下! 帽子はジェレミー・ハケットさんからいただいたもの」

2016

『007スペクター』の
ロイヤルプレミアに出席

「グローブ・トロッターは『007』のオフィシャルパートナー。チャールズ皇太子や皇太子妃もいらっしゃいました」

2018

ロイヤル・エア・フォース基地にて
PVと広告ビジュアルを撮影

「RAFとグローブ・トロッターのコラボモデルの発売に際した撮影でした。空軍機に乗ったのは初めて」

2018

『ボヘミアン・ラプソディ』の
ワールドプレミアに出席

「映画でも感動的シーンとして登場する、ウェンブリースタジアムです。有名な歌手と鑑賞しました」

心地よい旅を演出する、田窪氏の必需品

氏いわく、上質な旅に必要なのは「ふだんの自分でいるのに必要なもの」。フレグランスや素肌に身につけるシャツ、音楽に浸れるヘッドホンなど、使って心地よく、しかも長く使えるものが絶対条件となる。もちろん、品格が備わっていることも外せない要素だ。

〈スマイソン〉のボールペン

美しいスターリングシルバー仕様で、昔から外交文書のサインなどにも使われている由緒あるボールペン。「ヤード・オ・レッド製で、旅先で使うと気が引き締まります」

〈ジャガー・ルクルト〉の時計

「手巻きの時計を着いた場所の時間に合わせる行為が好きなんですよ(笑)」。こちらは、もう30年ほど愛用している表裏に2つのダイヤルを備えた「レベルソ・デュオ」。

〈グローブ・トロッター〉のウォッシュバッグ

エルメスと共同プロジェクトを実現させたこともあるグローブ・トロッターは、革小物にも定評がある。「技術が受け継がれ、ウォッシュバッグにも品格が宿っています」

〈ペンハリガン〉のフレグランス

150年近い歴史を誇る英国のフレグランスハウスの代表格。「サルトリアル」は、紳士に愛されるオードトワレ。「旅先でリラックスするには、好きな香りも不可欠です」

〈ターンブル&アッサー〉の
ドレスシャツ

ディナースーツ用のシャツ。ベーシックな衿型のためふだん使いにも対応。「ダニエル・クレイグが007で実際に着たものと同じ。シリアルナンバー付きの勝負シャツです」

〈アー・カー・ゲー〉の
ノイズキャンセリング・ヘッドホン

「機内では自分の世界に入る時間をつくるようにしています。高性能なヘッドホンは必須ですね」。ノイズキャンセリング機能搭載のブルートゥース対応モデル。