2015.07.17 update

開高健×島地勝彦 『蘇生版 水の上を歩く?』 | 刊行記念トークショー「酒とジョークと開高 健」を代官山・蔦谷書店で開催


芥川賞作家・開高健と『週刊プレイボーイ』を100 万部雑誌に育てた伝説の編集長・島地勝彦のジョークバトルが繰り広げられる名対談集『水の上を歩く? 酒場でジョーク十番勝負』が四半世紀ぶりに遂に復活。待望の復刊を記念して、島地氏がメンズ館8階=イセタンメンズ レジデンスにて、万年筆からファッション、ウイスキーまで、大人の男の嗜みを教える空間"salon de SHIMAJI(サロン ド シマジ)"が、6月5日(金)から7月6日(月)まで、代官山・蔦屋書店にて「島地勝彦が語ること、愛するモノ -サロン ド シマジ 臨時出張2号店- 」と題して登場しました。

最終日となった7月6日(月)には同店内に併設されるラウンジ「Anjin(アンジン)」にて、“食の冒険家”としても知られるエッセイスト・小泉武夫氏と同著の企画も務めた『サントリークオータリー』元編集長・谷浩志氏を迎えトークショーを開催。“酒とジョークと開高健”をテーマに、3人の思い出深いエピソードから新作ジョークまで飛び出しました。


谷氏が語る名対談集の誕生秘話とは…

「1978年、当時の上司と『洋酒天国』を復活させようと画策し、茅ヶ崎にある開高健氏の隠れ家を訪ねました。グラビア誌やカラー誌が増える中で活字を使って新しい文化誌つくりたいと相談したところ『ええやんか、不易と流行やな。』と快諾、佐治敬三社長(当時のサントリー㈱社長)からも『やってみなはれ』とお墨付きを頂いたんです。」

開高健と吉行淳之介の対談集『美酒について』も、谷氏が手掛けたもの。その書評を開高氏のすすめで『週刊プレーボーイ』編集長だった島地氏に依頼をしに訪ねたのが最初の出会い。その後、すぐに意気投合し、銀座のバーで気付けば週に4回も飲む仲になったといいます。

「酒場での島地さんのジョークは抱腹絶倒、むちゃくちゃ面白いんです。その一方で、『海外でのスピーチには一つ二つのジョークを入れなさい』という開高さんに、佐治社長や私はアドバイスをもらっていました。もともと仲の良いこの2人がジョークの言い合いをしたらどうなるのかなと思っていた頃、ちょうど酒場で闘志むき出しのジョーク合戦が繰り広げられていたんです。これは独り占めするのは勿体ない、このまま活字にしたらどれだけ面白いんだろう。という流れから始まったのが『サントリークオータリー』での対談なんです。とにかく10回やりましょう!『酒場でジョーク十番勝負』。タイトルだけ先に決まって、あとはお任せな感じで(笑)」


「面白いジョークを人に教わったり、ひらめいたりしたときは開高先生を思い出しますね。」ー島地勝彦


「私は日ごろ、仕事場には開高先生の写真を飾り、チャーチルのフィギュアを置いて3人で飲んでいます。下手なバーに行くより、一人で飲んでることの方が楽しいんです。
いづれ皆さんも私の年齢になったときにわかると思いますが、いかに一人で楽しく生きるか、これが人生の極意だと思います。これはジョークではなく本気です(笑)。

でも、残念なのは開高先生はお酒をストレートで飲んだことです。本場スコットランドのバーや蒸留所のオーナーもストレートでは絶対に飲みません。そんな飲み方をするのは日本人とアメリカ人だけ。西部劇への憧れなのか、ガッと飲むのがかっこいいのか…。開高先生が58歳の若さで亡くなったのもそれが最大の原因。食道がんになるからです。私がバーマンを務めるメンズ館のバーでも絶対にストレートもオンザロックも禁止しています。理由は…お客が減るのと大変なんです(笑)

この前も開高先生に会いましたがすごく元気で、相変わらずストレートで飲んでましたよ。『ここは天国だから(ストレートで飲んでも)いいんだよ、もう死ぬこともないしね。』ってね(笑)」


“生・酒場ジョーク十番勝負”に会場は笑いの渦に

無類のジョーク好きで『酒場でジョーク十番勝負』のファンでもあった小泉氏。「私には生涯の中で会いたい人が3人います。開高健、植村直己、そして島地勝彦。」開高氏のことを“文筆の師”と仰ぐが実は面識がないといいます。「会うことはできなかったけど、ずっと開高先生を追いかけていました。『水の上を歩く? 酒場でジョーク十番勝負』も120回以上、擦り切れるまで読みましたよ。」と、お気に入りのジョークを次々と披露していく小泉氏に、島地氏も応戦。次第にトークショーはジョークバトルへと様相を変えました。お酒の力も相まって、ついには新作ジョークも飛び出すほど。しかし、公の場では差し控えたい際どい内容ばかり。客席も大きな笑いに包まれ、気が付けば、あっという間の1時間。司会者から一旦お開きの言葉があっても尚、“生 酒場ジョーク十番勝負”は続きました。

「salon de SHIMAJI(サロン ド シマジ)」に関する記事はこちら
 連載「salon de SHIMAJI(サロン ド シマジ)」島地勝彦 今週の格言


中央/島地勝彦(しまじ・かつひこ)
1941年生まれ。青山学院大学卒業後、集英社に入社。1983年「週刊プレイボーイ」編集長に就任、100万部雑誌に育て上げる。その後「PLAYBOY 日本版」「Bart」の編集長、取締役を経て、集英社インターナショナル代表取締役。2008 年退任後、作家・エッセイストに転向する。『バーカウンターは人生の勉強机である』など著書多数。

左/小泉武夫(こいずみ・たけお)
1943年、福島県の酒造家に生まれる。東京農業大学農学部醸造学科卒。農学博士。専門は、醸造学、発酵学、食文化論ほか。うまいものをめぐる食のエッセイで有名なほか、テレビでもおなじみの好漢。著書に『猟師の肉は腐らない』『冒険する舌』『地球怪食紀行』などがある。東京農業大学名誉教授。現在、広島大学、鹿児島大学、琉球大学の客員教授も務める。

右/谷 浩志(たに・ひろし)
1953年生まれ。大阪大学人間科学部卒業後、サントリー(株)に入社。同社の先輩である作家の開高健、山口瞳氏の薫陶を受ける。広報課長時代に「サントリークォータリー」編集長をつとめ、開高健と島地勝彦の対談「水の上を歩く?」を企画、司会した。現在ストリートメディア株式会社取締役。横浜商科大講師、信州大学広報委員等を務める。日本旅行作家協会会員。


元々、『サントリークォータリー』22~31号の連載としてスタートした企画が、1989年にTBSブリタニカより書籍化され、この度、2015年6月22日に復刊。2人がそろえば丁々発止で延々と繰り広げられるウィットに富んだ世界のジョーク話。本書にはそのストーリー全174編が収録されています。初めての方は少々驚くかもしれません。島地氏のお言葉をお借りすると、「心して読んでいただきたい。」その言葉を胸に、本の扉を開いてください。
『蘇生版 水の上を歩く?酒場でジョーク十番勝負』(開高健・島地勝彦 共著/CCCメディアハウス)2,160円(税込)メンズ館8階=イセタンメンズ レジデンス

そして、生シマジは伊勢丹新宿店メンズ館8階、「サロン ド シマジ」で。
「salon de SHIMAJI(サロン ド シマジ)」島地勝彦氏来店スケジュール

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