YourFIT365体験|「靴磨き職人」河村真菜が選ぶ男性に履いて欲しい靴とは

2020年3月より伊勢丹新宿店メンズ館地下1階 紳士靴フロアに導入された、3Dスキャナーを使って足を計測し、そのデータに合った木型の靴をリコメンドする「YourFIT365」。足から靴が導かれる、従来の靴選びを根本から変えるこのサービスを、『男の靴雑誌LAST』編集長・菅原幸裕さんが体験。さらに靴磨き職人・河村真菜さんのアドバイスも交えて、ベストな一足を選びます。
また、今回は靴を熟知している靴のスペシャリスト2人だからこそ語れる、靴をかっこよく履きこなすために必要な靴選びのポイントを教えていただきました。世の男性に知って欲しい内容が盛りだくさん、必見です!

右:河村真菜
靴磨き職人。イタリアの女性靴磨き職人の生き様に感銘を受け、靴磨きの道を志す。地元名古屋にてシューシャインサロン『GAKU PLUS』を主宰する佐藤我久さんのもとで修業。『GAKU PLUS TOKYO』オーナーを経て、現在は個人として活動している。
実は分かってない人が多い?靴選びは自分のサイズを知ることが重要
菅原幸裕:普段、河村さんのところに磨きで持ち込まれる靴や、お客さまの足元をご覧になって、男性の靴選びにおいて、難しいと思われる点はありますか。河村真菜:ご自身の足のサイズと靴が合っていない方が、まだまだ多い印象があります。そもそも良好なフィッティングとはどういうものか、わかっていない方がかなりいらっしゃるのではないでしょうか。靴についたシワなどを拝見して、ちょっとサイズが大きいのではないですか、と申し上げても、「あ、そうですか」程度の薄い反応です。

菅原:サイズが合っていない靴を履かれている方は、どのくらいの割合でいらっしゃる感じですか。
河村:半分以上、7〜8割ぐらいの印象です。合っていない靴を履いていると、靴にも足にも負担がかかります。その結果靴にたくさんシワが入ったり、形が崩れてくることがデメリットです。そうすると少しずつ愛着も減っていってしまう気がします。
菅原:なるほど、だんだんケアなども疎かになっていくと。
河村:そうです。シューツリーを入れるのを忘れたり、ブラッシングをしていなかったり。そんな時に新品の靴を見ると思わず買ってしまったりして、さらに履かなくなってしまいます。
菅原: 逆にいうと、足に合った靴は長く愛着を持って履ける、サステナブルでもあるということですね。でも、なぜサイズの合わない靴を選びがちなのでしょう。それはブランドやスタイル優先で選んでしまうからなんでしょうか。
河村: 見た目を優先して選んでしまう方も確かに多いとは思いますが、自分の足の形やサイズを、きちんと測ってもらう経験がなかったということが大きいかもしれません。自分のサイズはだいたい27センチだと、店頭で27センチと27.5センチ、ふたつの靴を出してもらって、履いてみて楽な方を選ぶ、その程度のフィッティングで靴を選んでいたことが影響しているように思います。
菅原:今回体験するような「YourFIT365」は、自分の足の形状やサイズを理解する上でとても有効ですね。あと、もしかしたら足が小さいと見なされることが、男性としてマイナスだと勘違いされている方も多いかもしれません。

河村: 確かに、お話すると実際より大きなサイズをおっしゃる方がいらっしゃいますね。現代は本当に繊細な足の男性が多いのですが、少しでも大きく見せようと無理をして大きなサイズの靴を履いているということでしょうね。
菅原:女性から見て、大きな足元がいいということはないのでしょうか。
河村: 個人的には足が大きかったり小さかったりというのは、全く関係ありませんね。それよりも、ちょっと見栄を張って大きく見せているほうが格好悪いなと思います。
菅原:それに、サイズが大きすぎる靴だと、歩き方も変わってきますよね。
河村: はい。ちょっと引きずる感じで、だらしなく見えてしまいます。
菅原:ところで河村さんからみて、男性は何足ぐらい靴を持っていたらいいと考えますか。
河村: 最低5足ぐらいでしょうか。
菅原:ウィークデー5日分ということですか。
河村: 3〜4足は晴れの日用で、1足は雨天用という感じがいいように思います。最近の革靴を履かれる方は、お仕事でも、オフタイムでも、両方で楽しまれていることが多いようにお見受けしています。
菅原:靴のバリエーションとしては、どんな感じを考えられますか。
河村: やっぱりキャップトウ(つま先に横一文字の縫い目が入ったデザイン)のオックスフォード(内羽根式)は、黒と茶、色違いであると安心しますよね。黒のキャップトウは、一足目として選ぶのはトラディショナルな考え方において正解だとは思いますが、黒ばかりだとちょっと重い感じになってしまうので、特に若い年代の方だったら、もう少し色で遊んでもいいかもしれません。

河村: 他にはUチップやモンクストラップの靴も一足ぐらいあって、さらにカジュアルでも履けるローファーを選ぶ、という感じでしょうか。
菅原:着こなしやTPO的な点はどうでしょうか。例えばデニムにキャップトウオックスフォードを合わせるスタイルなどは、どう思われますか。
河村: ジーンズに革靴を合わせること自体は素敵だと思いますが、すごくクラシックなドレスシューズのスタイルで、さらにつま先をピカピカに鏡面仕上げした靴をデニムに合わせていたりすると、ちょっとびっくりします。
菅原:どこか違和感があるのでしょうか。
河村:スタイリングというのは、足元から服装までトータルの見え方が大切だと思うので、力を入れすぎたところがどこかにあると、そちらに引っ張られてしまうというか、バランスが崩れて変な感じを生んでしまいます。
菅原:足元一点豪華主義的にならないためにも、5足程度はバリエーションがあったほうがよさそうですね。
河村:はい、そうです。あと、これは男性に限りませんが、家を出る前にちゃんと鏡で全身をチェックしたいですね。頭の中だけでこんな感じだろうと考えても、実際に着てみた姿を見て、えっ、と感じたことは、誰しも経験があると思います。ちぐはぐにならないようにバランスをとる、それは靴選びに関しても同様だと思っています。
YourFIT365のデータに河村さんの感性がプラス!最終的に選ばれた靴とは

「YourFIT365」体験の手順:まず3D足型計測で足型を計測し、店頭の約20種類以上の対象ブランドの中から、ひとりひとりの足型に合ったおすすめの靴がタブレットに表示されます。表示された靴を元に店頭スタイリストのアドバイスとともにフィッティングし、お好みの1足を選びます。
今回YourFIT365によって導き出された菅原さんにおすすめ靴は、〈トモエ〉のキャップトウオックスフォードでした。それを踏まえて河村さんはUチップをピックアップ。果たして両者を試着した結果は?
髙橋(店頭スタイリスト): 実際に2つの靴を履いてみて、いかがでしたか。キャップトウオックスフォードとUチップは、いずれも〈トモエ〉ですが、それぞれ違う木型を使っています。比較すると、キャップトウのものよりUチップの木型は細めです。菅原さんはUチップのほうがお好きかもしれません。履いた時に、羽根も程よく開いていましたし。
菅原: 確かにUチップのほうがぴったりめでした。ヒールカップ(かかとを覆う部分)も小ぶりで、ボールジョイント(足の一番広い部分)の位置も合っている感じがしました。

髙橋: そうかもしれません。靴の甲部を触った時に、二の甲のフィッティングがよかったですね。
菅原: その一方でキャップトウは、サイズが合っていて、なおかつ靴内部に全体的に空間があって、楽に履ける感じでした。
髙橋: キャップトウのフィッティングのほうが一般的には人気があります。「当たらないのがいい」と言われることが多いですね。
菅原: 自分の足に合っているのはUチップかもしれません。でも、スタイル的にはキャップトウも捨てがたい。履き口が広めにとってあって、ヴァンプライン(甲の部分)の形状など、クラシックな印象があります。

河村:私としても、やっぱり菅原さんにはUチップをおすすめしたいですね。
菅原:なぜ河村さんはUチップがおすすめなんですか。
河村: Uチップを選んで履かれている方を拝見すると、どこか「余裕」を感じます。革靴といえば黒のキャップトウやブローグ(穴飾り)、というイメージがあると思いますし、実際一足目の靴としてお店の方がお薦めされることも多いと思います。そこであえてUチップを選ぶところに、正解だけじゃなくてもいいという気持ちが表れているように感じるんです。
菅原: 確かに、スーツにキャップトウオックスフォードは定石通り。そこをあえて「外す」ところに、余裕感が生まれるかもしれませんね。
菅原: あと、Uチップを選ぶ人が、それ一足しか持っていない、ということもあまりないでしょう。その判断の背後にいくつかの靴があるということも含めての余裕、でもありますね。今回はブラウンを選びましたが、色に関してアドバイスはありますか。
河村: いえ、色は茶でも黒でもお好みでいいと思います。でもその場合も、茶を選ぶ方はすでに黒や茶の靴を何足かお持ちのことが多いですね。あと、エイジングのお話はしやすくなるかもしれません。履き込んでお手入れすることで靴が味わいを増すということが、茶の革ならよりわかりやすいと思うので。
菅原: YourFIT365で導かれた靴を起点に、河村さんの意見、さらに髙橋さんのスタイリストとしての見識やアドバイスが加わって、今回、このUチップにたどり着きましたね。

髙橋: 私たち店頭のスタイリストとしては、無数の靴の中から、いくつかの選択肢に絞りこむこともYourFIT365の役割と考えています。そこからはスタイリストがお客さまに適した一足を選ぶお手伝いをいたします。きつめのフィッティングがお好みでもそこに痛さはないか、緩めがお好みでも足と合っているかは、実際に履いていただいて拝見しないとわからないところがあります。

髙橋: YourFIT365にスタイリストの知見を掛け算することで、より良い靴をご提案できればと思っています。今回のように当初YourFIT365でヒットしなかった靴を、最終的に選ぶケースはこれまでもありました。YourFIT365はまずお客さまにご自身の足を知っていただく、という役割が大きいです。
菅原:なるほど。 YourFIT365によって自分の足に合ったブランドが導かれたなら、そのブランドの木型バリエーションを試してみるという選び方は有効かもしれませんね。今後もYourFIT365に対応したブランドや型数も増えてきているようなので更に靴選びが楽しみになりますね。
紳士靴Instagram:@isetanmens_shoes
Photograph:Tatsuya Ozawa
Text:Yukihiro Sugawara
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