NEW Dressing Etiquette──続・装いのエチケット Vol.1

ネクタイとシャツとの組み合わせには、マナーを守るため、スタイリッシュに見せるための確固たる方程式が存在する。しかし正しいだけの装いはつまらない。Vゾーンとは“感性”というひとさじのスパイスを加えることで、はじめてあなたの豊かなパーソナリティを表現するツールへと、熟成を遂げるのだ。

Text:Eisuke Yamashita


「ネクタイはそれを締めている人より一歩先に部屋に入ってくる」

かつてエリザベス女王の専属デザイナーとして活躍した故ハーディ・エイミス卿は、自らの著書でこのように語りました。日本ではその意味合いは軽んじられていますが、国際社会のリーダーたちは、スーツよりもむしろネクタイというアクセサリーがもつ意味を重要視しています。たとえばアメリカ大統領ドナルド・トランプ氏の押し出しの強いキャラクターと、妙に丈の長い真っ赤なネクタイ。そしてロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチン氏が放つ存在感と、ディンプル(くぼみ)のない、まるで刃物のように鋭利な質感のネクタイ。たとえそのセンスには共感できなくても、キャラクターづくりのための道具と考えれば、彼らの思惑は見事に当たったわけです。私たちも装いにおけるネクタイ、そしてVゾーンの果たす役割の重要さだけは肝に銘じたうえで、今という時代が求める個性を演出したいものです。


Case 1
やや硬めの衿芯が入った真っ白なドレスシャツと、どっしりとしたシルクツイル製のネイビーソリッドタイ。心を引き締めたい週のはじまりにふさわしい、精悍なVゾーンだ。
<ターンブル&アッサー> シャツ 38,880円
<ドレイクス> ネクタイ 20,520円


Case 2
ブラウン系のカラーで統一したVゾーンは、週末の装いによく合う成熟したムードと、秋の訪れを感じさせる。光沢を抑えたビンテージ調のペイズリータイは、今季のトレンドアイテムである。
<バルバ> シャツ 31,320円
<ドレイクス>ネクタイ 20,520円

もしあなたが精悍さや若々しさをアピールしたいのなら、真っ白なブロード生地のシャツと、ネイビーのソリッド(無地)タイという組み合わせに勝るものはありません。とりわけイタリア人が好むこのVゾーンは、政財界人からセリエAの監督、ファッション業界人にいたるまで、幅広く愛用されています。ビジネスシーンや会食はもちろん、結婚式の二次会などのフォーマルな場面にも対応するので、1セットそろえておけば安心です。ただし無地×無地のVゾーンは、ネクタイの光沢感が強すぎると嫌みに見えるのでご注意を。その点同じ無地同士でも、オックスフォードのボタンダウンシャツとニットタイというトラディショナルな組み合わせなら、いたって健康的なイメージです。

そしてもしあなたが男としての成熟感をアピールしたいのであれば、柄シャツ×柄タイの法則はマスターすべきでしょう。大きな紋様の入ったタイやロンドンストライプシャツなど、単品では主張の強いアイテムでも、ベースの色をシックなブルーやブラウン系で統一すれば、しっくりとなじんで柄だけが躍りだすことはありません。この法則を押さえたうえで、ひし形やペイズリーモチーフなど、今季のトレンドを取り入れれば、モダンなジェントルマンの完成です。


Case 3
ロンドンストライプ柄シャツに、幾何学紋様入りのプリントタイというパワー系Vゾーン。ベースをブルー系で統一し、ウールタイで光沢を抑えたことで、上品な印象に。
<アビーノ・ラボラトリオ・ナポレターノ> シャツ 37,800円
<カラブレーゼ> ネクタイ 14,040円


Case 4
オックスフォードボタンダウンシャツと、ニットタイという、時代に流されない普遍的なVゾーン。タイの色みで季節感を取り入れて。シンプルな合わせながら、素材感の差異で立体的なVゾーンを構築。
<フェアファクス> シャツ 16,200円
<アスコット フォー フェアファクス> ネクタイ 11,880円


さて、ここまでVゾーンのもつ意味やテクニックをご紹介しておいて、今さらこんなことを書くのも申し訳ないのですが、あまり決まりごとに縛られるのも面白くないですね。なぜならVゾーンとは、本来とてもロマンチックな、男の感性を表現する絵画のようなものなのですから。そういえば私がお洒落の師匠と仰ぐカントリージェントルマンは、その季節ごとに窓から見える風景をVゾーンで再現するそうです。たとえばこれからの時季なら、ブラウンのチェックシャツを木々に、同系色のペイズリータイを色づく紅葉に見立てるのだとか。ああ、これこそが本当の意味での“旬”。男としての基本的な装いのマナーと、豊かなお洒落心とが結びついたVゾーンこそが理想です。

山下英介
やました・えいすけ●1976年、埼玉県出身。メンズファッション誌の編集部員を経て、2008年よりフリーのファッションディレクターとして独立。“買って、着て、書く”をモットーに、メンズライフスタイル誌の編集、WEB媒体への執筆など、幅広い分野で活動する。趣味の写真撮影が高じて、雑誌などで撮り下ろすことも。上のフォックスブラザーズ社のダグラス・コルドー社長も自身にて撮影。グレンチェックの3ピーススーツに、小紋柄というアンダーステイトメントなVゾーンに、着こなしのヒントがあるという。

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