2018.07.24 update

【インタビュー】<CLOUDY/クラウディ>銅冶勇人|作り手とお客さまと一緒に「チーム・クラウディ」の輪を広げていく

アフリカの民族の色柄、伝統の織、特産品などを中心に扱い、“アフリカンテイスト”を大胆に取り入れたアパレルブランド<CLOUDY/クラウディ>。アフリカ・ガーナの象徴的な民俗柄の中でもモダンに映えるシャツや"ポケT"、ポーチなど、現地のファブリックを使用したモノづくりを展開している。今回は、<クラウディ>を主宰する株式会社 DOYA代表の銅冶勇人(どうやゆうと)氏にインタビュー。アフリカへの想いや現在の活動状況について話を訊いた。



<CLOUDY/クラウディ>を展開する株式会社 DOYA代表の銅冶勇人氏

品質を高めながら、関心がない人にアプローチしていく


<クラウディ>は、ケニアとガーナを中心にアフリカ7カ国を拠点にし、各地に縫製工場を設立。現地の雇用を創出するとともに、伝統的な素材やデザインを取り入れて上質なモノ作りを行っている。ブランドアイコンとなる「ポケT」は、現地で裁断されたポケットを使用。グッズも合わせた売上の一部がアフリカに寄付され、現地の学校の建築費用などに充てられている。

このような活動は得てして、途上国の現地の事情でクオリティが落ちていったり、継続性がなくなったり、消費者の目線でモノを作れなくなるブランドやサポート事業がいくつもあるが、<クラウディ>は品質を担保することで、途上国のサポートなどに関心がない人にもしっかりとアプローチ。「現地雇用の生産者にも世界中の消費者にもメリットがあることを続けたい」と語る銅冶氏は、現場レベルで物事を考えて、本当の意味でのサポートを。と想いを込める。

伊勢丹新宿店では、2016年に本館3階=リ・スタイルにて初のポップアップが行われ、以来"ブランドの進化を見ていただける貴重な機会"として欠かせないイベントに成長。メンズ館でのポップアップでは「アフリカのファブリックがもつパワーなどを感じてほしいですね」と銅冶氏。ポケットTシャツなどのアパレルをはじめ、クッションやポーチなど新作コレクションがバリエーション豊富に揃う。

 

モノも人もすべてが連鎖して、チームを大きくしていきたい 



――
現在はどんなペースでアフリカに行っているのですか。

プロジェクトはガーナとケニアをメインにアフリカ7カ国で、工場運営と学校建築・運営を行っていて、月1回は現地に行っています。工場に職業訓練学校を併設して運営していて、ポケットTのポケット部分を作ることから教えています。現地雇用の人は学校へ行っていないので、数字の概念がありません。㎝(センチメートル)がわからないので、最初のステップとして「4×4cmのポケットを測って切る」ことから教えています。

――それは大変な仕事ですね。

雇用支援や教育支援は大切なことですが、お客さまにはまず<クラウディ>そのものを気に入っていただけることが前提です。「この商品が社会貢献に繋がっている」ことを理解していただき、商品の購入につながっていくという流れが生まれるといいなと思っています。現在も<クラウディ>をファッションとして楽しんでいる方と、社会貢献活動の一つという見方をされる方に分かれますが、まずなによりも「欲しいモノ」であることが大事だなと。お客さまを見ていると、ブランドや商品が持つこだわりやストーリーを理解して購入される方が増えてきていることを強く感じます。



――
アフリカを見続けて感じることを教えてください。

アフリカの経済面の統計的な数字はあまりあてになりませんが、自分の肌感覚でいうと、経済成長は続けていると思います。ただ、実態は上流階級層だけが経済成長の恩恵を受けていて、90%以上を占める庶民は物価が上がって生活が苦しくなっていく一方だなと。IT化や中国進出なども上流階級の生活を潤している感じですね。現地のためにできているアクションは少ない印象です。

――そういう状況で<クラウディ>の活動は一石を投じているのでは。

アフリカを動かしているとか、国を変えているというイメージはありませんが、「出会った人たちに選択肢を与える」ことは大事にしています。たとえば、学校に通う子どもが、学んだことで自分の人生の中での選択肢を増やすことができればそれでいい。あるいは子どもたちの身近な大人が工場で仕事に就いて生き生きと働いているのを見て、それが憧れになれば、そういう大人たちを雇っていることの意味があります。学びと仕事を与えることで、少しずつ変わってきていると思います。



――
定職に就くことや、学校に通うことがいかに大事かということですね。

<クラウディ>を始めてこの数年で、私の物差しですが、大きな変化が生まれていると思います。現地にいると様々な理不尽なことも起こりますが、工場で働いて、生産物ができて、それを手に取るお客さまがいて、また現地に還元して、子どもたちに学びを与えるという連鎖しているすべてが「チーム・クラウディ」なんです。

彼らの魂がファブリックや色柄に宿っている



――
シビアな現状があるなかで、彼らの作る伝統の色や柄はとてもインパクトがあります。

アフリカのこのポジティブな色や柄の表現は、「歌と音楽と踊り」から生まれたと聞いていて、彼らの主張や生きざまがこの色柄に凝縮されています。まさにエネルギーそのもので、私たちはそういうものを無意識のうちに受け取っています。

――<クラウディ>が掲げる「たとえ今日が、くもりでも」というメッセージの意図は。

実はブランド名は1年半悩み続けました。当初はポジティブな名前を考えていましたが、途中からネガティブな名前がいいなと思い、「クラウディ」が浮かびました。私はサラリーマン生活も経験していますが、人間は生きていれば様々な不安やネガティブな悩みなど“グレーなこと”を抱えます。アフリカも同じで、生活の不安やコンプレックスなど“グレーなもの”を多く抱えています。だけどそれらを払拭して明るく前に進む力がある、曇りを払拭して晴れにできるブランドにしていきたいと、「クラウディ」に決めました。こうやってブランド名の由来を訊いていただけるきっかけにもなっています。


 <クラウディ>2018年春夏コレクションより


――<クラウディ>の今後の活動を教えてください。

欧米のファッションショーでエスニック柄がトレンドソースとして注目されるなど、新しい動きも出てきています。<クラウディ>が新しいファッションの可能性を表現していければ、雇用できる人数が増え、クオリティを向上させることにも繋がります。工場のクオリティが上がれば、そこで違うモノを生産できるなど、仕事の幅が広がります。また、アフリカに限らず、消費者の皆さんと一緒にいろんな国で工場や学校を作れると思っています。

――では伊勢丹メンズ館のお客さまにメッセージを。

アフリカの現状は貧困や戦争、差別、病気などいろんなものを抱えていますが、ぜひこの機会に興味をもっていただき、アフリカの風を感じて、アフリカの笑顔を作っていただければこれ以上うれしいことはありません。

Text:Makoto Kajii
Photo:Keita Takahashi(Interview)

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